項目 | 内容 |
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製品名 | 何でも見てやろう |
著者名 | 小田 実 |
発売日 | 1979年07月11日 |
価格 | 定価:924円(本体840円) |
判型 | A6 |
ページ数 | 458ページ |
シリーズ | 講談社文庫 |
感想と評価
1950年代後半に、世界各地を見て回った体験を綴った記録.バックパッカーのバイブルとして不動の地位を確立している『深夜特急(著:沢木耕太郎)』であるが、その陰に潜みつつも原点かつバックパッカーの走りともいえる作品として名高い.
概要としては世界22ヶ国を貧乏旅行した体験記ではあるが、他の海外放浪記とは一線を画す.これには、著書の1)旅行スタイル、2)表現力、語彙が影響しているものと思える.
1)旅行スタイル
旅のスタイルは、一枚の帰国用航空券と持参金200ドルで世界一周旅行に出かけたこと.航空券のストップオーバーを利用し、1日1ドルの予算で半年間の生活を計画していた.貨幣価値は1ドル360円、物価は現在の1/7程度である.
夢が“留学生業”を開業することであり、その足がけとしてアメリカへ基金を使って留学するところから始まる.そのアメリカでのやりたいことは、“ニューヨークの摩天楼“ ”ミシシッピ河“ ”テキサスの原野”を観ることだった.
旅行期間は比較的短く、訪問国数も限られている.ただ、タイトルにもある著者のスタンス『何でも見てやろう』が本書を確固たる個性として確立している.何を否定するわけでもなく、強い興味や好奇心の思うままに進み、すべてを受け入れてすべてを理解しようとしている姿勢があった.著者の言う通り、自分の心理面や金銭面により観る世界はフィルターやバイアスをかけてしまうことが常になる.
世界の広さを知るために、固定観念を外している点が良かった.
2)著者の個性(対人スキルとと表現力)
本書は、約60年以上経っているが、表現が現代のそれとは大きく異なっている.
この表現力や語彙力は、東京大学文学部言語学科を卒業した能力に加えて、フルブライト奨学金によるアメリカ留学の経験が、放浪中に「作家」としてのアイデンティティを持つことで、自らに課した高い基準が影響しているだろう.
それでも、英語が話せないスタートから、放浪中では幾分か言語を扱えるようになっていたところもみられ、言語については深い造詣と理解および使い方を会得していたように思う.
特筆すべきは著者の対人スキルで、財政的な困難にもかかわらず前進し続ける貪欲さと、日本人であることが珍しい当時、多くの人々との間で築いた友好関係が印象的だった.語彙能力がそれほど上がっていないだろう時期からである.これには、見た目・お金、言語力に囚われずに自分のやりたいことを実現しようとした突破力を感じた.
放浪中に活躍していた対人スキルを、技術として捉えて戦略的に考えていた.ここは、生きるための術であり、羨ましいと感じた.
Impressive reviews from other watchers
Positive
たしか半世紀くらい前に読んだことがあるように記憶するが、内容的に、再読してみて、ああああ!って感じで、まったく初読風味満点だったな。実に面白かった。
小田実が”なんでも見てやろう!”ってんで、フルブライト留学生になって、ハーヴァードっていう当時の世界一の大学に入学した後、世界無銭旅行に出かけたのは、今から60年以上も前の1958年だった・・・。
日本人は人種的にいちおう準「白」に分類されるとしても、アメリカでは、いまだに黒白はっきりさせる時代だった。しかし、当時のアメリカは今のようにどこかで誰かが鉄砲なり自動小銃をぶっ放すお国柄でもなかった。その点、今よりは安全だったかもしれない、いや、絶対安全だったろう。まあ、それはいい、小田実の”旅”のすごいところは、常に日本と彼の地の文化の違い様々を相当うるさく分析しているっていうことだろう。21世紀の今、毎年何百万人も海外旅行にお出かけになる日本人観光客がこんなに豊かになったところで、ここまで、”文化”の彼我の違いを感じいるって言う”旅行”をしていらっしゃるのか?
小田の感想がそこそこどころか、相当当たってる!っていうのもなかなかに面白い、で、いまだに21世紀のいまだに、あんまり変わってない!っちゅうことなんだな、これが。60年後になってもだな・・・
小田実は、2007年に亡くなってしまったけど、この本は、これからも読み続けてもらいたいなっていう感じ。
https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R2Y6V4VE7NKYZU/
Negative
沢木耕太郎が影響を受けたらしき本を初めて読む。当方とは文体というかリズムが合わないなぁ、何か読み辛い。面白いのは確かなんだけど、まぁ仕方ない。
https://booklog.jp/users/0107springsteen/archives/1/4061315838#comment
当方が幼き頃、テレビに出ていた変なおっさんはほんまもんの変人やった。とにかく怖ろしいほどのバイタリティーで駆け抜ける世界体感記。
時代を感じさせることもあり、全く変わらないと思わせることもあり。とりあえずインドは最強と改めて認識、そして行くこともない気がする、、、
蛇足ながら日本の喫茶店最高説、正しいかも。今流行りのアメリカ発のコーヒー屋は確か喫茶店にインスパイアされたらしき記事を読んだ気がする。この感性には感服。