科学的根拠に基づく最高の勉強法
日本で医者を目指し、アメリカの臨床医として働くようになるまで、
そして医者になってからも、結構長い時間を勉強に費やしてきました。
そして、人生の限られた時間の中で、やりたいこと、
やらなければならないことがたくさんある中で、
いかに効率的に勉強したら良いのかについても考えてきました。
僕がこれまでなんとかやってこられた大きな理由の1つ、
それは、自分が行ってきた勉強法が、科学的にも効果の高い勉強法だったからだと思います。
あとになって学習に関する論文を読みながら、
「なるほど、そんなことだったのか」、そう感じたことを覚えています。
この本に書いてある勉強法は、誰でもすぐに実践できる、
効果が確認された勉強法です。
Impressions and evaluation
心理学や各種実験結果に基づく科学的根拠をもとに、実際の学習に役立つ多くの知見が詰まっています。
本書の特徴は、著者自身が難関の国家試験(日本とアメリカの医師国家試験)に短期間で合格した経験を基にしている点です。難関でありながら、短い期間で合格しないといけない著者の知見が簡潔にまとまっています.
まず1章では、科学的に効果の高くない勉強法について明確に指摘しています。例えば、繰り返し読む(再読)やノートに書き写す行為は、短期的には効果があるものの、長期的な記憶や理解にはつながりにくいと述べられています。また、ハイライトや下線を引くことも効果が薄いとされています。普段行っている勉強法を見直すきっかけとなるでしょう。ここで目から鱗の人も多いハズです.
一方で、効果的な勉強法として、アクティブリコールや分散学習、精緻的質問と自己説明、インターリービングなどが紹介されています。アクティブリコールは情報を積極的に思い出すことで記憶を強化する方法であり、分散学習は学習を複数のセッションに分けて行うことで記憶の定着を図る方法です。また、精緻的質問と自己説明は、学習内容を深く理解するための手法として有効です。
さらに、本書では自己決定理論やセルフモニタリングなど、学習者のモチベーションを高めるための心理学的アプローチも詳述されています。これにより、学習者が自律的に学ぶ姿勢を養うことができます。
特に印象に残ったのは、著者の実体験を交えた具体的なアドバイスです。例えば、アクティブリコールと分散学習を組み合わせた連続的再学習や、プロダクション効果を利用した白紙勉強法など、実践的な方法が具体的に示されています。
残念な点としては、本書の後半で、個人的には著者の実例が少なくなった点が残念でした。1章や2章をさらに詳しく書いてほしかったという気持ちが強いです.逆にいうと、2章までが本書の強みであり、多くの読者が知りたいところであると言えます.
vocaburary
ざっくですが、本書に登場する用語と概要をまとめてみました
用語 | 説明 |
---|---|
流暢性の錯覚 | 簡単に情報を処理できることが、理解や記憶の確かさを保証するという誤った認識。 |
望ましい困難 | 学習が一時的に難しくなることで、長期的な記憶や理解が向上する現象。 |
コーネル式ノート | 講義や読書の内容を効率的に整理するためのノート取りの方法。 |
アクティブリコール | 情報を積極的に思い出すことで記憶を強化する学習法。 |
分散学習 | 学習を複数のセッションに分けて行うことで、記憶の定着を図る方法。 |
精緻的質問 | 詳細な質問を通じて学習内容を深く理解する方法。 |
自己説明 | 学習内容を自分自身に説明することで理解を深める方法。 |
インターリービング | 異なる科目やトピックを交互に学習することで理解と記憶を向上させる方法。 |
分散学習 間隔反復 | 時間を空けて繰り返し復習することで記憶の定着を図る方法。 |
プロダクション効果 | 自分で情報を生成することで記憶の定着が向上する効果。 |
プロテジェ効果 | 他者に教えることで自分の理解が深まる現象。 |
概念マップ | 情報を視覚的に整理するための図。 |
連続的再学習、分散された想起練習 | 学習内容を定期的に思い出しながら再学習する方法。 |
フィードバック | 学習の進捗や理解度に対する評価や助言。 |
メタ認知 | 自分の認知過程を把握し、調整する能力。 |
イメージ変換 | 記憶する情報を視覚的なイメージに変換する方法。 |
ストーリー法 | 情報を物語の形で覚えることで記憶しやすくする方法。 |
場所法 | 覚えたい情報を特定の場所に結びつけて記憶する方法。 |
自己関連づけ効果 | 自分に関連付けて情報を記憶することで記憶力を高める効果。 |
利用価値介入 | 学習内容の実用的な価値を認識することでモチベーションを高める方法。 |
アカデミックセルフコンセプト | 学業に対する自分自身の認識や信念。 |
自己効力感 | 自分が特定のタスクを遂行できるという信念。 |
セルフモニタリング | 自分の学習進捗や理解度を自己評価すること。 |
自己決定理論 | 人間の動機づけに関する理論で、内発的動機づけと外発的動機づけが含まれる。 |
外発的動機づけ | 外部の報酬や評価によって動機づけられること。 |
内発的動機づけ | 自分自身の興味や満足感によって動機づけられること。 |
自律性 | 自分で行動を選び、制御する能力。 |
有能感 | 自分が有能であると感じること。 |
関係性 | 他者との関係性やつながりを感じること。 |
内発的目標 | 自分の興味や価値に基づいた目標。 |
外発的な目標 | 外部の報酬や評価に基づいた目標。 |
環境的文脈 | 学習や記憶が行われる環境の状況。 |
記憶の文脈効果 | 学習時の文脈が記憶の再生に影響を与える効果。 |
default mode network | 脳が休息状態にあるときに活性化するネットワーク。 |
Impressive reviews from other watchers
Positive
現在40代ですが、10代の頃に身に付けておきたい内容でした。
高校生の娘に本書の1章と2章の内容だけでも学んでもらいたいと思っています。著者が資格試験などのために実践していた「ブツブツ呟いて教えるフリをしながら書き出す白紙勉強法」。
これらのうちには、アクティブリコール、プロテジェ効果、プロダクション効果など、脳科学的に有用性が実証済みの優れた効果が含まれていたとのこと。自らを省みても、記憶を反芻すること、書くことや人に教えることによる効果を感じることはありました。本書では、長期記憶への定着等に資する各種の技法が整理された形で、また実証実験における検証結果などのエビデンスと併せ分かりやすく提示されています。漠然と感じていたことの裏付けを得られた気分です。
人生長いですし、本書から得られたノウハウを活用して学びを続けていければと思います。
https://booklog.jp/users/hanage2/archives/1/4046067233
Negative
良いとされる勉強法は今までどこかしら聞いたことがあるものしかなかった。ただ、良くない勉強法も併せて知れたことで今後は正しいプロセスで勉強できる。かもしれない。
https://booklog.jp/users/gaki-toru/archives/1/4046067233