社会全体の「目指すべき姿」を失った背景

現在の日本社会全体を覆っている「思考の癖」や「構造的な限界」を非常に鋭く言い当てていると考えられます。

社会全体の動きとして、なぜ「理想の追求」ではなく「現状の微調整」がメインになってしまうのか、その要因をいくつか挙げて説明します。


社会全体の「目指すべき姿」を失った背景

戦後の日本には「欧米に追いつき、追い越す」という極めて明確な「目指すべき姿」がありました。しかし、その目標を達成して以降、社会全体で共有できる次のビジョンを見失っています。

  • キャッチアップ型の終焉
    これまでは他国の背中を追えば正解が見つかりましたが、現在は日本自身が世界でも類を見ない「課題先進国(超高齢化など)」となり、手本となる先行事例がどこにも存在しません。
  • 成功体験の重石
    過去に成功した社会システムや雇用慣行があまりに強固だったため、それを根本から作り直すよりも、少しずつ修正しながら維持する方がコストが低いと判断されがちです。
    • 悪手を働いてるのは、日本がイケてたバブル崩壊前後に動いてたものが現行でも多く残っている点ではありますが・・

なぜ「現状の時勢」からしか考えられないのか

「現状維持をベースに流行りを取り入れるのみ」という傾向は、以下の社会心理や構造から説明が可能です。

リスクを取らない「減点方式」の社会

日本の官僚組織や大企業の多くでは、何かを大きく変えて失敗した時の責任が、現状維持を続けて緩やかに衰退する責任よりも重く問われる傾向にあります。その結果、誰も「理想(To-Be)」を掲げるリスクを負わなくなりました。

「積み上げ式」の意思決定

政策や経営戦略の多くが、過去の実績や現在のリソースを起点にするフォアキャスティング(積み上げ思考)に基づいています。

「10年後のあるべき社会」から逆算するのではなく、「今の予算と人員で来年できること」を積み重ねるため、画期的な将来予測や変革が生まれにくくなります。


流行を取り入れることが「免罪符」になっている

「今流行っているもの」を導入する行為は、本質的な将来予測を放棄した際の「言い訳」として機能してしまう側面があります。

  • 思考の外部委託
    自ら将来を描く代わりに、世間で話題のワード(例として「DX」「SDGs」「リスキリング」など)を看板に掲げることで、動いているフリをして安心感を得ている状態です。
  • 手段の目的化
    それらの技術や方針が「社会をどう変えるか」ではなく、「それを取り入れていること自体」が評価の対象になってしまいます。

世界と比較した日本の特異点

他国においても現状維持のバイアスは働きますが、日本において顕著なのは「横並び意識」と「同質性」です。

比較項目多くの日本組織・社会ビジョンを持つ社会(北欧・一部の米企業)
変化の動機周囲がやり始めたから(外圧)理想を実現したいから(内発)
成功の定義失敗せず、現状を継続すること目的を達成し、新しい価値を創ること
将来像の策定現状の延長線上にある予測理想から逆算した意志ある計画


まとめ

「現状の時勢や技術から考えるから将来予測ができない」というご意見は、意志を持った未来設計(バックキャスティング)よりも、環境への適応を優先しすぎてしまったという、現在の日本社会が抱える構造的な弱点を見事に言語化されています。

これは、教育、行政、エネルギー政策など、あらゆる分野で共通して見られる現象と言えるでしょう。

Don`t copy text!