政府・与党が、住宅ローン減税の面積要件を現在の原則50平方メートル以上から「40平方メートル程度」へと恒久的に緩和する方向で検討に入ったというニュースが流れています。
これは、国土交通省が2026年度から改定する「住生活基本計画」の議論と連動しており、日本の住宅政策が大きな転換点を迎えていることを示唆しています。
参考リンク
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025111301190&g=eco https://www.homes.co.jp/cont/press/opinion/opinion_00424/
一言で申し上げると、これは**「国が『標準的な世帯』の定義を『ファミリー』から『単身者』へ広げ、コンパクトなマンション購入を後押しする政策転換」**です。
今回は、この改正の全体像と、私たち生活者にとって何が変わるのかを解説します。
1. 住宅政策の転換点|「住生活基本計画」の改定概要
国交省は5年ごとに住宅政策の指針となる「住生活基本計画」を見直しており、2026年度からの次期計画に向けた議論が始まっています。
新しい政策の柱
- 「単身者」の資産形成支援
これまでの政策は子育て世帯が中心でしたが、未婚化・晩婚化で単身者が急増する中、単身者が若いうちに持ち家を取得しやすくする環境整備が重要な柱となります。 - 居住面積水準の見直し
国が定める「豊かな住生活」の基準面積(誘導居住面積水準)が、都心の不動産価格高騰や多様なライフスタイルに合わなくなっています。特に単身者向けの基準を現実的なラインへ修正することが急務です。
その他の重要論点
- 良質な住宅ストックの循環
新築だけでなく、既存(中古)住宅の売買を促進し、省エネ性能の高い住宅への誘導が引き続き強化されます。
2. なぜ今「40平米」なのか?国の意図と目的
面積要件の緩和や単身者支援に舵を切る背景には、日本の社会構造の変化と経済活性化の狙いがあります。
① 未婚・単身世帯の急増への対応
「夫婦と子供2人」という標準世帯モデルは崩壊し、生涯未婚率の上昇などで単身世帯が最も多い世帯類型になりつつあります。この層が家を買えない(賃貸に住み続ける)ことは、老後の住居不安や資産格差の拡大につながるため、これを政策的に防ぐ狙いがあります。
② 「現実的に買えるサイズ」の承認
都心マンション価格が高騰し、50平米以上の部屋は一般の会社員には手が届きません。一方、30〜40平米台の「コンパクトマンション」ならまだ購入可能です。この「現実的に購入できるサイズ」を国が税制面で支援対象として認める必要があります。
③ 職住近接の推進
郊外の広い家よりも、都心の狭くても便利な家を好む層が増加しています。40平米程度の物件取得を支援することは、都心居住を促進し、優秀な人材の定着と経済活動の活性化に繋がります。
3. 住宅ローン減税「40平米以上」定着の意義
これまで住宅ローン減税は原則「床面積50平米以上」が対象でした。このラインの引き下げは、どのような変化をもたらすのでしょうか。
これまでの経緯
従来、50平米未満の物件は「投資用」と見なされ、優遇税制の対象外とされてきました。 現在は特例として、2024年・2025年の入居分に限り、所得制限(1,000万円以下)付きで「40平米以上」でも減税が使えるようになっています。
2026年以降の変化と影響
今回の議論では、この「40平米以上」という基準を、特例ではなく「恒久的な基準」や「単身者も含めた一般ルール」として定着させようとしています。
- 「40平米」が意味するもの
40平米は、単身者がゆとりを持って暮らせる、あるいは共働き子なし(DINKs)でも工夫すれば住める広さです。 - 資産形成の促進
ここを減税対象にすることで、「家賃を払うより買ったほうが得」という層が大幅に増え、中間層の資産形成を後押しする強力な仕組みになります。
4. 住宅政策は「おひとり様」時代へ
今回のニュースは、日本の住宅政策が大きなパラダイムシフトを迎えていることを示しています。
- 広さから現実性へ
「広さ重視」から「立地と現実性重視」へ - 世帯モデルの変更
「ファミリー優遇」から「おひとり様も包摂」へ
国からのメッセージは、「結婚してから家を買う」ではなく「独身のうちにコンパクトな資産(家)を持ってほしい」というものです。
この政策転換により、40平米台の1LDK〜2DKマンションの需要はさらに高まり、デベロッパーもこのサイズの供給に注力すると予想されます。
私があなたのためにできること
この緩和が実現した場合、実際にどれくらいの節税効果が見込めるのか、シミュレーションの試算や、現在市場に出ている「40平米台・都内好立地」のマンション相場について詳しくお調べしましょうか。