コンサル外注は時代遅れになるのか【連載③】

近年、多くの企業が当たり前のようにコンサルを外部から導入しています。プロダクトオーナー業務を任せたり、管理業務を推進してもらったりと、役割も幅広くなりました。しかし実際に現場を見ていると、コンサル外注に対する違和感や限界を感じる場面も増えています。

一方で、コンサル費用の高騰や人材品質のばらつきも話題となり、内製化を進める企業が増えている印象があります。本記事では、外注依存の構造的な問題と、内製化の流れが強まる理由を整理し、今後コンサルがどのような役割に収束していくのかを考えていきます。

企業が内製化を志向する背景

IT領域では、外部に頼るか自社で生み出すかが企業成長の分岐点になりつつあります。まずは外注依存が抱える課題を整理します。

外注依存がもたらす弊害

ノウハウが社内に残らない問題

・コンサルに業務推進を任せると、成果物や方向性は得られても、肝心の思考プロセスが社内に蓄積されにくい

・改革やDXの中身を外部に依存すれば、次の改善を自力で進められなくなる

・結局、毎回コンサルに頼らざるを得ない構造が固定されてしまう

これは短期的には効率的に見えても、長期的には自社の成長力を削ぐ要因になります。

プロジェクト完了後に再現できないリスク

・コンサルが抜けた瞬間にプロジェクトの推進力が失われる

・仕組みや運用が外部主導で作られているため、自社が主体となれない

・最終的には自社で改善や保守ができず、外部依存が加速する

成果物を社内で運用し続ける力が育たないことは、企業にとって大きな損失です。

内製化によって得られるメリット

継続的な改善とスピード感

・内製化すれば、自社の文脈を理解したうえで改善を続けられる

・外部との調整が不要なため、意思決定までのスピードが向上する

・業務改善や仕組み構築が継続的かつ自発的に行われるようになる

外部依存から自走型へ移行することで、企業は長期的な競争力を獲得できます。

組織学習と人材育成の効果

・自社で若手を巻き込みながら仕組みを作るほうが、組織の学習効果が高い

・専門性の高いメンバーと新人を組み合わせることで、育成効果が生まれる

・自社が「生み出す力」を持つことは、将来のDXや改革の基盤になる

外注を続けると自分たちで考える力が育たないため、ここは企業の大きな問題意識になりつつあります。

コンサル単価上昇が与える影響

外部コンサルに頼ることの限界は能力だけではなく、コスト面でも顕著になっています。

企業のコスト構造から見た外注

一件当たりの投資額の重さ

・近年、外資系を中心にコンサル単価が上昇

・一案件当たりの費用が数千万規模になることもある

・成果が曖昧な業務に多額のコストを投下することへの抵抗感が強まっている

特にPO業務や管理業務のような抽象度の高い領域では、費用対効果が見えづらく、コストの正当化が難しくなります。

経営層が感じる費用対効果の疑問

・コンサルは成果物の保証が限定的である

・改善施策の実行や保守は自社が責任を負う必要がある

・成果と費用が見合わないケースが増えている

結果として、経営層は外注を漫然と続けることに疑問を持つようになりつつあります。

単価上昇が案件選別を促す流れ

「本当に外注すべきテーマ」の絞り込み

・単価が高いからこそ、外部に任せる領域を慎重に選ぶようになっている

・抽象度の高い管理業務や一般的なDX推進などは内製化へ流れやすい

・自社で進めるべき業務と外部に依頼すべき業務を見極める傾向が強まっている

守りよりも攻めのテーマへのシフト

・戦略、M&A、財務再編など、企業の大規模な意思決定に直結する領域は外注が残る可能性が高い

・一方で業務整理や改善のような実務に近い領域は内製化されていく

・外注を使うのは「攻めのテーマ」に限定される未来が見えている

単価上昇は外注の減少を生み、結果的に案件の質と範囲が大きく変わりつつあります。

外注減少後のコンサルの立ち位置

内製化が進むなかでも、コンサルという職種は完全に消えるわけではありません。むしろ役割が再定義されていく段階にいます。

残る案件の特徴

超専門領域と超短期決戦型のプロジェクト

・高度専門性が必要で自社では再現困難な領域

・短期間で集中的に成果を求められる案件

・特殊な知見や経験が必要な場面は外部が強い

こうした領域は、今後もコンサルの役割として残り続けると考えられます。

経営トップ直下のアジェンダ

・経営層が直接推進する重要プロジェクト

・機密性や意思決定のスピードが求められる場面

・経営判断の補助として外部の視点が効果を持つ領域

つまり「経営レベルのテーマ」は外注が残る可能性が高い領域です。

内製チームとの協業スタイル

コーチング型支援への変化

・手足として動くのではなく、内製チームを育てる役割に移行

・プロジェクトを推進するのではなく、自社メンバーの伴走を行う

・考え方や進め方の型を移植するような関わり方が中心になっていく

手足ではなくパートナーとしての役割

・業務を代行するのではなく、専門家として方向性を示す

・実務部分は自社メンバーが担い、コンサルは上流で支援する

・内製化を支える外部パートナーという立場に変わる

外注という形よりも、協力関係に近いスタイルへの変化が今後進む可能性があります。

おわりに

コンサル外注は依然として一般的な手段ですが、状況は確実に変わりつつあります。

・外注依存が生み出す長期的な弊害

・単価上昇によるコスト負担

・内製化により組織が得られる学習効果

・コンサルの役割が専門領域に限定されていく流れ

これらを踏まえると、コンサル外注は「時代遅れ」というよりも「使いどころが限定される時代」に入っていると言えます。

企業が自ら考え、自ら生み出し、自ら改善していく力を持つことが、これからの競争力に直結します。内製化は単なるコスト削減ではなく、組織としての本質的な強さを取り戻すための重要な選択肢になっているのではないでしょうか。

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